歌稽古 | 歌稽古 |
顔合わせから数日間は、歌稽古です。全編歌で綴られるミュージカル「ひめゆり」の楽曲は、41曲。2時間半のドラマのすべてが楽譜に書き込まれています。コーラスのパートを決め、音取りをしながら、次第に「ひめゆり」の世界を体感して行くキャストたち。ステージングが始まるまでに全曲歌えるようにと歌稽古を指導するのは、劇団員の田宮華苗さんです。
田宮華苗
「毎年毎年、この作品でのビリー先生(山口琇也)の歌稽古での、楽曲に込められた意味や思いを聞いて来て、自分も思い入れがありますし、今年参加される方に、私が学んできたことを伝えながら、私も一緒に勉強し、理解して行きたいという気持ちでいます。でも、何度もやっているのに、ビリー先生の歌稽古やハマナカさんの言葉に、「ああ、そうなんだ」と思うことが毎年あって、発見することばかりですね。この作品の深さを感じますし、だからこそ新鮮にやれるのだと思っています。」
中央は長谷川ゆうり | 中央は仲里美優 |
歌稽古は、最後、歌だけで全体を通す稽古まで進みました。左上は、歌稽古中の長谷川ゆうりさん。劇団四季「人間になりたがった猫」ジリアン役や、東宝「ミス・サイゴン」への出演などで実力が知られています。「ひめゆり」は、2013年以来、2度目の出演です。前回ははる役でしたが、今回はふみ役に変わりました。
長谷川ゆうり
「前回は、はるちゃんで出させていただき、三人でワーワー言いながら生き残ったんですけど、今回も生き残る役ということで、思うことがたくさんあります。元学徒の方や戦争経験者の方のお話はもちろんですが、3.11から4年たった今の被災地の声を聞いていて、生き残るということは、すごく大変なことだと、前回よりも感じています。この軍国主義の時代に、ふみちゃんは、自ら生きることを選んで、しかも、みんなが南へ逃げるなかで、あえて“戻る”という選択をした。今、歌稽古でふみのパートを追っていくと、「死んではいけない」とか「生きて帰ろう」とか、本当に強い意志を持った子だなと思います。演じるにあたって、相当のエネルギーと強い思いがないと、とてもふみちゃんとして生き残ることはできないと思いましたね。まだまだ先は長いので、勉強をして行きたいと思います。」
はる役の仲里美優さんは、今年1月の「氷刀火伝-カムイレラⅡ-」以来、2度目のミュージカル座出演です。沖縄の石垣市出身で、家族は沖縄戦に巻き込まれています。
仲里美優
「私の祖母は、対馬丸に乗っていて、祖母が沖縄に上陸したすぐその後に、疎開する学童たちが乗って内地に向かっている途中で、爆撃されたそうです。祖父は兵士だったのですが、左腕を負傷しまして、臨時で建てられた病院で、そのままのこぎりで左腕を切断されました。沖縄戦で負傷した人が載っている本があって、祖父母の写真が掲載されています。私は「ひめゆり」を2013年に観て、本当は去年も出たかったのですが、オーディション情報を知らないまま一年がたってしまい、今年は絶対に出演したいと思い、オーディションを受けました。戦後70年という節目に、この舞台に立たせていただけるので、沖縄の血が流れている私にしか分からない思いを、舞台の上でしっかりと伝えて行きたいと思っています。」
サチ役に挑む紺屋梓さん。「ひめゆり」は昨年に続く出演です。今年2月上演の「マザー・テレサ 愛のうた」では、大役の修道院長をつとめ、確かな演技力が評価された実力者です。
紺屋 梓
「前回は、学徒のクミをやらせていただきました。今回はサチという大人の役なので、また違った目線で「ひめゆり」を深めていきたいなと思います。去年から引き続き出演されている中村萌子さんが歌う「小鳥の歌」の次に、サチの歌があるので、しっかり気持ちを受け継いで演じたいと思っています。今後、ミュージカルに関わっていきたいと考えていますが、ミュージカルは、メロディーが流れていくので、自分の感覚でしゃべれないところがすごく難しいです。やっぱり歌だけどセリフなので、音程や音符を読むことはすごく大事なのですけれど、しっかりとお芝居を見せたいと強く思っています。戦争を体験した方が少なくなるなかで、これからの世代に伝えるための役割になれたら嬉しいです。」
歌唱力を武器に、ミュージカルの世界で活躍することを目指す平山透さん。「ひめゆり」には初出演で、サチの夫役や兵士役を演じます。
平山 透
「学生の頃から歌をやっていたんですけど、ずっとミュージカルで活躍したいという夢がありました。仕事をやめてレッスンを積んだので、そろそろオーディションを受けてみようと思い、たまたま友人がミュージカル座の公演に出ていたことをきっかけに、このオーディションを受けました。ありがたいことに合格をいただき、少しソロもある役をいただいて、大変ありがたく、しっかりと役割を果たせるようにつとめていこうと思っています。「ひめゆり」に関しては、中学生の頃に合唱曲の「ひめゆりの塔」を学内コンクールでやりまして、その時、沖縄戦のことも勉強しました。とても思い入れのある内容なので、今回の出会いも、何かの運命かなと思っています。初めてお会いする方々ばかりですが、助け合って、いい関係のカンパニー、いい作品をつくり上げたいです。」
ステージング開始 | 中央は紺屋 梓と平山 透 |
歌稽古が終わり、ステージングが始まりました。これから一ヶ月以上をかけて、「ひめゆり」全場面の動きが作られて行きます。ステージングを付けるのは、演出のハマナカトオルです。幕開きは、愛するふるさとが戦場になって行く悲しみと怒り、恐怖に襲われる沖縄の人々。冒頭から迫力の場面が展開します。