自分の部屋から一歩も外へ出られない「ひきこもりっこ」の女性が、インターネットのサイトに書き込んだ「私は死んだ方がいい」という言葉に、見知らぬ人々からコメントが届き始めます。言葉を送ってきた不思議なハンドルネームの彼らは、自分も生きることに悩み苦しむ若者たちでした。顔も素性も知らない仲ながら、彼らとひきこもりっこの間に、次第に心の結びつきが生まれてきます。「ひめゆり」「ゴーストミュージカル」「ルルドの奇跡」など多くのミュージカルを創作してきた山口琇也とハマナカトオルのコンビが、サイバー空間を舞台に、若者の心の問題にスポットを当てた鮮烈な現代劇のミュージカル。2024年1月、梅沢明恵の演出によってビジュアルも新たに甦ります。どうぞご期待ください!!
ストーリー ひきこもりとなって自分の部屋から出られず、何年も苦しんでいる「ひきこもりっこ」は、ある日自分のPCに「私は死んだ方がいい」という文章を書き込みます。すると、見知らぬ人々からコメントが届き始めました。妹をイジメで亡くしたイサム。渋谷が大好きな遊び人のロビンちゃん。ひきこもりで5年間もお風呂にはいっていないなげやり娘。世界中を旅しながらパソコンで会話する笑う旅人。親友に恋人を奪われたショックで何も出来なくなり、ひきこもったお蝶夫人。学校の先生からサイボーグとあだ名をつけられ、それがきっかけでイジメにあっている男の子など、ハンドルネームからイメージされた登場人物たちが、ひきこもりっこのサイトで、生きることについて真剣に議論し、励まし合い、にぎやかに歌い踊る命のミュージカル!
上演スケジュール 上演時間:約2時間25分(途中休憩15分含む)
※受付開始および開場は開演の30分前です。 【スタンド花・アレンジ花・お花束について】
出 演
スタッフ プロフィール紹介
スタッフ 脚本・作詞:ハマナカトオル/作曲・編曲・音楽監督:山口琇也/演出・振付:梅沢明恵
『インターネットの時代のミュージカル』 脚本・作詞 ハマナカトオル
ミュージカルは、20世紀初頭からアメリカで現代劇として発達して来た舞台芸術のジャンルです。その時代を映す鏡のような作品が生まれて来ました。大不況の時代には、不況の現実を描くシリアスな作品や、不況に打ち勝つ希望を持った作品が生まれました。戦争が起こると、戦争に反対するメッセージを持った作品や、アメリカでは時に戦争を支持し、戦意を鼓舞する作品も上演されました。カウンター・カルチャーの時代には、若者たちに新しく生まれた価値観や宗教観もミュージカルに描かれました。ひとつのミュージカルを語るには、作品が生まれたその国の時代背景を知ることが不可欠です。それでは、今の日本から、いったいどのようなミュージカルが生まれるべきなのでしょうか? 私は、1995年にミュージカル座を創立して、日本のミュージカルの創作に取り組んでからずっと、今の日本から生まれるべきミュージカルについて考え続けていました。ところが、しばらくの間、これがまったく浮かんで来なかったのです。今の平和な日本から、何をメッセージにミュージカルを書いていいのか、私のアンテナに引っかかって来ませんでした。そこで、過去の時代や外国にドラマティックな題材を求め、沖縄戦で犠牲になったひめゆり学徒隊の悲劇や、アメリカの黒人公民権運動に題材を取ったミュージカルなどを書いていました。しかし、それでもなお、今の日本から生まれるミュージカルについて、考えるのをやめたわけではありませんでした。 ミュージカル「レント」の日本初演公演を赤坂見附の会場で観た帰り道、赤坂の街を歩きながら、ずいぶんニューヨークと東京では空気感が違うことに気づきました。「レント」は、まさにその時代から生まれて来た現代のミュージカルで、作品が生まれたニューヨークの劇場では、舞台の上の世界と劇場の外に出た通りが、地続きで繋がっているように感じたのですが、赤坂では、まったくそのように感じなかったのです。それでは、この東京にふさわしい題材とはなんだと、帰り道、真剣に考えたことを覚えています。 インターネットの発達は、この四半世紀で、最も大きなインパクトを持つ出来事だったと思います。時代が大きく、激しく変わりました。便利になり、助かったこともたくさんありますが、その反面、危険な世界や人間の闇の部分もそっくり同居しています。インターネットのおかげで幸せになった人も大勢いるでしょうし、破滅した人も大勢いるでしょう。私も、ささやかながらミュージカル座のホームページを運営し、インターネットを見る機会が増えて行くに連れ、少なからぬ影響を受けて行きました。次第にサイバー空間で繰り広げられるミュージカルの可能性について思いを馳せるようになり、2000年代初めのネットの掲示板で、ひとつの問題に対して匿名で語られる本音の言葉の洪水を眺めているうちに、この作品のアイデアを思いつきました。ネットに書き込まれた夥しいひとつひとつの言葉(意見等)が、私にはミュージカルの歌詞のように思えて来た瞬間があったのです。ネットに書き込まれるさまざまな言葉は匿名性もあって、直接人と会って話す時には、とても言えないような言葉も含まれています。話し言葉より本音が表れています。ミュージカルの歌も心の表現で、相手に向かって話すセリフより本音が表れます。歌でセリフを綴るミュージカルは、セリフで綴るお芝居より心の表現に向いている舞台芸術のジャンルと言えます。『インターネットの世界で繰り広げられる本音の会話を、歌と踊りで描くミュージカル』を創ってみたいと思うようになりました。 ミュージカルのスタイルとしては、「キャッツ」や「コーラスライン」のスタイルで描きたいと思っていました。セリフで進行する通常のドラマ(芝居)とは似ていなくて、「紅白歌合戦」などのショーやコンサートに近い舞台のスタイルです。その場面のメインとなる人が中心で歌い踊り、その他のキャストは、コーラスやダンサーとしてメインの人を応援する(盛り上げる)。メインで歌った人も、自分がメインでない時には、他の人のバックをつとめます。ミュージカルが誕生する以前からあった古い「ショー」の原型ですが、この形式は、現在の最も新しいミュージカルまで、表層を変えて連綿と受け継がれています。原型ですから、とても安定したスタイルなのです。 この作品では、サイバー空間で交わされる「実際の会話ではない会話」は、すべて音楽の中で歌と踊りで描き、ラストシーンで現実世界で交わされる「実際の会話」は、音楽を止めて普通のお芝居で描こうと決めました。「ネットの世界」と「現実世界」で、表現のスタイルを変えたのです。ミュージカルの「音楽」部分と「芝居」部分で、これだけ明確な区分けを定義出来るのは、私の作品ではこの「サイト」だけで、私がこの作品を好きな理由です。
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WEBサイトから溢れる、命のミュージカル!!
自分の部屋から一歩も外へ出られない「ひきこもりっこ」の女性が、インターネットのサイトに書き込んだ「私は死んだ方がいい」という言葉に、見知らぬ人々からコメントが届き始めます。言葉を送ってきた不思議なハンドルネームの彼らは、自分も生きることに悩み苦しむ若者たちでした。顔も素性も知らない仲ながら、彼らとひきこもりっこの間に、次第に心の結びつきが生まれてきます。「ひめゆり」「ゴーストミュージカル」「ルルドの奇跡」など多くのミュージカルを創作してきた山口琇也とハマナカトオルのコンビが、サイバー空間を舞台に、若者の心の問題にスポットを当てた鮮烈な現代劇のミュージカル。2024年1月、梅沢明恵の演出によってビジュアルも新たに甦ります。どうぞご期待ください!!
ひきこもりとなって自分の部屋から出られず、何年も苦しんでいる「ひきこもりっこ」は、ある日自分のPCに「私は死んだ方がいい」という文章を書き込みます。すると、見知らぬ人々からコメントが届き始めました。妹をイジメで亡くしたイサム。渋谷が大好きな遊び人のロビンちゃん。ひきこもりで5年間もお風呂にはいっていないなげやり娘。世界中を旅しながらパソコンで会話する笑う旅人。親友に恋人を奪われたショックで何も出来なくなり、ひきこもったお蝶夫人。学校の先生からサイボーグとあだ名をつけられ、それがきっかけでイジメにあっている男の子など、ハンドルネームからイメージされた登場人物たちが、ひきこもりっこのサイトで、生きることについて真剣に議論し、励まし合い、にぎやかに歌い踊る命のミュージカル!
1958年東京生まれ。ミュージカル作家・演出家・プロデューサー。俳優、宝田明氏が主催する宝田芸術学園でミュージカルを学び、舞台俳優の活動を経て脚本・演出家として独立。数々の作品を発表した。1993年から専門学校舞台芸術学院ミュージカル部別科の主任講師として、19回の卒業公演を作・演出。多くの生徒を育てた。1995年、国産の新作ミュージカルの創造と普及を目的に「ミュージカル座」を創立。劇団代表・座付作家・演出家・プロデューサーとして、「ひめゆり」「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」「ゴースト」「ロザリー」「ルルドの奇跡」「サイト」「アインシュタイン・フォーリーズ」「センス・オブ・ワンダー」「ガールズ・オン・ブロードウェイ」「ブロードウェイ殺人事件」「ニューヨーカーズ」「スウィング・ボーイズ」「舞台に立ちたい」「三人の花嫁」「コンチェルト」「雪の女王」「不思議なラヴ・ストーリー」「赤ひげ」「わだつみのこえ」「何処へ行く」「マザー・テレサ 愛のうた」「チェアーズ」「スター誕生」「おでかけ姫」「月に歌えば」「ハートスートラ」「結婚行進曲」「タイムトラベラー」「二人でミュージカル」「アワード」「クリスマスに歌えば」「踊る!埼玉」「ボードビル」「ファミリア!」「スター誕生2」「映画の都」「東京ミュージカル」「ハリウッドは大騒ぎ」「パラレル」等のオリジナル・ミュージカルや、「ママの恋人」「野の花」等のストレートプレイを発表。劇団外では、松竹「花いくさ」、黒木瞳「ママ・ラヴズ・マンボ」シリーズ、「今井清隆ファースト・コンサート」、「イル・ミュージカーレ」などを手がける。公益社団法人日本演劇協会会員。
Webサイト「ハマナカトオル作品集」
桐朋学園大学音楽学部卒業後、オペラ、ミュージカルの舞台に数多く出演。また、スタジオプレイヤー(ベース、キーボード、ヴォーカル)、コンサートのバックミュージシャン、アレンジャー、指揮等々の経験を積んだ後、スタッフ活動に加わり、ミュージカルの分野では「ミス・サイゴン」「レ・ミゼラブル」「回転木馬」「42nd ストリート」「ラ・マンチャの男」「ベガーズ・オペラ」「ブラッド・ブラザーズ」「GOLD~カミーユとロダン~」「ダディ・ロング・レッグズ」「ナイツテール」「オリバー」等の音楽監督、並びにヴォーカルトレーナーを務め、コンサート、リサイタルの構成・プロデュースなども数多く手がけている。また、タレント、歌手の方々のヴォーカル指導にも力を注ぎ、あらゆるジャンルに対応出来る声作りを目指している。「ひめゆり」「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」「ルルドの奇跡」「赤毛のアン」「ママ・ラヴズ・マンボ」「スウィング・ボーイズ」など、オリジナル・ミュージカルの作曲・編曲家としても数多くの作品に参加し、「山彦ものがたり」では文化庁主催海外公演(中国・ベトナム・韓国)を行い、英語台本でのニューヨーク公演は反響を呼んだ。「ミュージカル座」の作曲・音楽監督として、オリジナル・ミュージカルの新作発表を目標に創作活動を続けている。その他、NHKをはじめ多くのTV番組の音楽スタッフとして活動するかたわら、若い才能の育成にも力を注いでいる。2006年には舞台の音楽活動に対し菊田一夫賞(特別賞)、2007年には読売演劇大賞優秀スタッフ賞、2010年には日本演劇興行協会賞を授与された。ミュージックオフィスALBION代表。
東京都出身。ミュージカル座所属。
幼少期よりダンスを学び、レコード大賞や紅白歌合戦などダンサーとして多くのイベントやTV番組に出演。舞台芸術学院ミュージカル部別科卒業後、ミュージカル座創立と同時に入団。数多くの作品で演出助手や振付助手としてカンパニーを引っ張ってきた。「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」「舞台に立ちたい」「サイト」「アワード」「プロパガンダ・コクピット」などでは振付も担当。黒木瞳主演「ママ・ラヴズ・マンボ」3作品では振付助手をつとめた。「ひめゆり」は初演より出演し、現在にいたるまで振付助手・演出助手・演出補佐をつとめてきた。2021年3月の「ひめゆり」(彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて上演)より演出を務める。他に「何処へ行く」「ルルドの奇跡」「ハートスートラ」「ファミリア!」の演出を担当。また「ハリウッドは大騒ぎ」では、脚本・作詞・演出・振付家のハマナカトオルと共に、共同演出・振付を務める。
ひきこもりっこ
中村ひかりひきこもりっこ
石丸椎菜イサム
イサム
ロビンちゃん
18夜・20昼夜・21昼夜
ロビンちゃん
17夜・19昼夜
ハデハデ魔女
ハデハデ魔女
お蝶夫人
お蝶夫人
笑う旅人
ひきこもり王
笑う旅人
ひきこもり王
サイボーグ
サイボーグ
なげやり娘
なげやり娘
マジギレさおりん
マジギレさおりん
ソフィーの世界
ソフィーの世界
一休さん
一休さん
にせ北島マヤ
にせ北島マヤ
泣きみそ先生
泣きみそ先生
ヒッキ―
ヒッキ―
メンディー
メンディー
おたっきー
おたっきー
岡ひろみ
岡ひろみ
藤堂さん
藤堂さん
アンサンブル
夢女子まかろん
アンサンブル
夢女子まかろん
アンサンブル
崖っぷちデイトレーダー
アンサンブル
SPY×HITOLY
アンサンブル
ホス狂めろてゃ♡
アンサンブル
限界OL田中
アンサンブル
夢やぶれた保育士
アンサンブル
夢やぶれた保育士
アンサンブル
明日の嬢
アンサンブル
明日の嬢
※谷口あかり:1/17(水)夜・1/19(金)昼夜
※浦壁多恵:1/18(木)夜・1/20(土)昼夜・1/21(日)昼夜
※星組マジギレさおりん役で出演予定でした秋田知里は、怪我の療養のため降板となりました。代わりに、「すがたさこ」がマジギレさおりん役を務めます。
※月組メンディー役で出演予定でした八田知夏は、急な体調不良により療養期間が長期に渡るため降板となりました。代わりに、「田辺椰紗」がメンディー役を務めます。
■この度の降板に関しまして払い戻しは致し兼ねます。悪しからずご了承ください。
2024年01月17日(水) ~ 01月21日(日)
☞ 京浜急行 各駅停車「新馬場駅」北口より徒歩約3分
☎ 03-3471-3200
ヒル | ヨル | |
1/17(水) | 18:30 | |
1/18(木) | 18:30 | |
1/19{金) | 13:00 | 18:30 |
1/20(土) | 12:30 | 18:00 |
1/21(日) | 12:00 | 16:00 |
受付開始および開場は開演の30分前です。
※本公演は 組・ 組の一部変則のダブルキャストで上演致します。
※出演者ならびに出演スケジュールに変更がありました場合は、何卒悪しからずご了承ください。出演者変更の場合でも、払い戻しはいたしかねます。
※残席ある場合は、劇場受付にて当日券を開演30分前より販売いたします。ご観劇当日のご予約は承っておりません。当日券をご利用下さい。
※3歳以下のお子様のご入場はできません。
※車いすでご来場されるお客様は、お席の指定などがございますので、ミュージカル座までご連絡をお願い致します。
■会場内でのマスクのご着用をお願い致します。(ご観劇中のマスク着用は任意です。)
【スタンド花・アレンジ花・お花束について】
■ロビーに飾るお祝い花(スタンド・アレンジ・鉢物)について。
※ラメで装飾されているお花はご遠慮下さい。
《お受け取り可能日時》
1/17(水)13時~15時
(上記は目安の時間帯です。多少お時間がずれてもお受け取り可能です。)
《指定業者について》
お祝い花をお贈りいただく際は、下記の指定業者へのお申込みをお願い致します。
株式会社PREMIER GARDEN(プレミアガーデン)
https://www.prrr.jp/
※ご注文はWEBサイトよりお申込み下さい。
※お届け先には「出演者名」の記載をお願いいたします。
※WEBサイトには、お祝い花写真の例も掲載されております。ご参照下さい。
〠 330-0061
埼玉県さいたま市浦和区常盤9-8-15 松本ビル
【東京営業所】
〠170-0013
東京都豊島区東池袋1-34-5 いちご東池袋ビル6F
TEL:048-825-7460
FAX:048-825-7461
E-mail:m-za.info@musical-za.co.jp
ミュージカルは、20世紀初頭からアメリカで現代劇として発達して来た舞台芸術のジャンルです。その時代を映す鏡のような作品が生まれて来ました。大不況の時代には、不況の現実を描くシリアスな作品や、不況に打ち勝つ希望を持った作品が生まれました。戦争が起こると、戦争に反対するメッセージを持った作品や、アメリカでは時に戦争を支持し、戦意を鼓舞する作品も上演されました。カウンター・カルチャーの時代には、若者たちに新しく生まれた価値観や宗教観もミュージカルに描かれました。ひとつのミュージカルを語るには、作品が生まれたその国の時代背景を知ることが不可欠です。それでは、今の日本から、いったいどのようなミュージカルが生まれるべきなのでしょうか?
私は、1995年にミュージカル座を創立して、日本のミュージカルの創作に取り組んでからずっと、今の日本から生まれるべきミュージカルについて考え続けていました。ところが、しばらくの間、これがまったく浮かんで来なかったのです。今の平和な日本から、何をメッセージにミュージカルを書いていいのか、私のアンテナに引っかかって来ませんでした。そこで、過去の時代や外国にドラマティックな題材を求め、沖縄戦で犠牲になったひめゆり学徒隊の悲劇や、アメリカの黒人公民権運動に題材を取ったミュージカルなどを書いていました。しかし、それでもなお、今の日本から生まれるミュージカルについて、考えるのをやめたわけではありませんでした。
ミュージカル「レント」の日本初演公演を赤坂見附の会場で観た帰り道、赤坂の街を歩きながら、ずいぶんニューヨークと東京では空気感が違うことに気づきました。「レント」は、まさにその時代から生まれて来た現代のミュージカルで、作品が生まれたニューヨークの劇場では、舞台の上の世界と劇場の外に出た通りが、地続きで繋がっているように感じたのですが、赤坂では、まったくそのように感じなかったのです。それでは、この東京にふさわしい題材とはなんだと、帰り道、真剣に考えたことを覚えています。
インターネットの発達は、この四半世紀で、最も大きなインパクトを持つ出来事だったと思います。時代が大きく、激しく変わりました。便利になり、助かったこともたくさんありますが、その反面、危険な世界や人間の闇の部分もそっくり同居しています。インターネットのおかげで幸せになった人も大勢いるでしょうし、破滅した人も大勢いるでしょう。私も、ささやかながらミュージカル座のホームページを運営し、インターネットを見る機会が増えて行くに連れ、少なからぬ影響を受けて行きました。次第にサイバー空間で繰り広げられるミュージカルの可能性について思いを馳せるようになり、2000年代初めのネットの掲示板で、ひとつの問題に対して匿名で語られる本音の言葉の洪水を眺めているうちに、この作品のアイデアを思いつきました。ネットに書き込まれた夥しいひとつひとつの言葉(意見等)が、私にはミュージカルの歌詞のように思えて来た瞬間があったのです。ネットに書き込まれるさまざまな言葉は匿名性もあって、直接人と会って話す時には、とても言えないような言葉も含まれています。話し言葉より本音が表れています。ミュージカルの歌も心の表現で、相手に向かって話すセリフより本音が表れます。歌でセリフを綴るミュージカルは、セリフで綴るお芝居より心の表現に向いている舞台芸術のジャンルと言えます。『インターネットの世界で繰り広げられる本音の会話を、歌と踊りで描くミュージカル』を創ってみたいと思うようになりました。
ミュージカルのスタイルとしては、「キャッツ」や「コーラスライン」のスタイルで描きたいと思っていました。セリフで進行する通常のドラマ(芝居)とは似ていなくて、「紅白歌合戦」などのショーやコンサートに近い舞台のスタイルです。その場面のメインとなる人が中心で歌い踊り、その他のキャストは、コーラスやダンサーとしてメインの人を応援する(盛り上げる)。メインで歌った人も、自分がメインでない時には、他の人のバックをつとめます。ミュージカルが誕生する以前からあった古い「ショー」の原型ですが、この形式は、現在の最も新しいミュージカルまで、表層を変えて連綿と受け継がれています。原型ですから、とても安定したスタイルなのです。
この作品では、サイバー空間で交わされる「実際の会話ではない会話」は、すべて音楽の中で歌と踊りで描き、ラストシーンで現実世界で交わされる「実際の会話」は、音楽を止めて普通のお芝居で描こうと決めました。「ネットの世界」と「現実世界」で、表現のスタイルを変えたのです。ミュージカルの「音楽」部分と「芝居」部分で、これだけ明確な区分けを定義出来るのは、私の作品ではこの「サイト」だけで、私がこの作品を好きな理由です。