ミュージカル座5月公演
このミュージカルは、あなたの宝石となる。 ミュージカル「ハートスートラ」は、世界で最も有名なお経である「般若心経」を題材にしたミュージカルです。ミュージカル作家ハマナカトオルが頭に描き続けた、アジア発のミュージカルの形。日本人はもちろん、海外の人にも見せたい東洋のミュージカルの答え。これまで「ひめゆり」「何処へ行く」など数多くのミュージカルの創作を続けて来たミュージカル座代表のハマナカトオルと、ハマナカとコンビを組んで「スター誕生」「アワード」など4つのミュージカルの作曲を手がけた若き音楽家、久田菜美が創作した独創的な『まさにアジアのミュージカル!』です。2017年4月の初演から2年、新たな神秘の幕が上がります。このミュージカルは、あなたの宝石となる。どうぞご期待ください!!
ストーリー 「般若心経」は、1,500年の昔から、日本人に最も愛されてきたお経で、英語で「ハートスートラ Heart Sutra(心のお経=心経)」と言い、世界中で翻訳され、広く親しまれています。ジョン・レノンやスティーブ・ジョブズにも大きな影響を与えたと言われ、ジョン・レノンの世界的ヒット曲「イマジン」は、「般若心経」の「無=No」の教えが含まれていると言われています。「般若心経」の般若とは、智慧のことです。あらゆる悩みから解き放たれる仏教の心髄と言える最高の智慧が、わずか262文字の「般若心経」のなかに含まれています。西洋の人も心酔する、この奥深い東洋の智慧には、いったいどのような教えが書かれているのでしょうか。ミュージカル「ハートスートラ」は、ミュージカルという舞台芸術の魅力のすべてを使って、「般若心経」を分かりやすく紐解き、皆様に知っていただくと同時に、心と身体で感じていただく作品です。東洋的な思想・哲学・美術・音楽・舞踊の要素を詰め込んだ『アジアのミュージカル』を、どうぞお楽しみに!
■演奏 Keyboard1…久田菜美/中林万里子
■スタッフ 脚本・作詞・演出・振付/ハマナカトオル 作曲・編曲・音楽監督/久田菜美
■上演スケジュール 上演時間:2時間30分(途中休憩15分)を予定
ブロードウェイで考えた「アジアのミュージカル」 脚本・作詞・演出・振付/ハマナカトオル
ニューヨーク、ブロードウェイの街角にたたずみ、多くのミュージカルの看板を見上げながら考えることは、この街で日本人が創作した「アジアのミュージカル」が成功するとしたら、どんな作品だろう、ということです。約20年間、私の頭の中には、ひとつの題材があり、それを越える題材は浮かびませんでした。それが、日本で世界で最も愛されているお経「般若心経」でした。「えっ!? お経をミュージカルに!?」と、意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長年ミュージカルに携わっている私からしてみると、決して意外ではないのです。たとえば、ミュージカル「キャッツ」は、T・S・エリオットの詩が原作です。色々な猫の思想や哲学が散りばめられた詩の束が、ミュージカルになりました。「お経」も、色々な仏教の思想や哲学が散りばめられた、詩によく似たものだと、私には思えます。しかもお経は、リズムに合わせて声に出して読誦するものですから、歌とも、とても近いものと感じていました。でも、その内容に関しては、私たちアジア人でも、よく知らない人が多いと思います。お経なんて法事で聞くくらいですから、どうしてもお葬式のイメージと一緒になってしまいます。ミュージカル座の劇団員に「お経をミュージカルにしようと思うんだ」と話すと、「えっ!こわーい!」と言われたことがあります。でも、内容をよく知ると、お葬式とは関係ないもので、むしろ生きるために必要な、知っておいた方がいい智慧が書かれているのです。 「般若心経」が言っていることの中心は、なんと言っても「空」と「無」のオン・パレードでしょう。この世の中のすべて、そして自分さえも、空である、無であると繰り返し言っています。「自分という存在は、五蘊という五つの要素の集まりであって、自分という確固たる存在はない」と言うのは釈迦の教えですが、大乗仏教の経典である「般若心経」では、その五蘊さえも「空」であると説きます。この世の中にある決まり事や大前提を、すべて「ない」とリセットすること、今の言葉で言うと「初期化」することが、「般若心経」というお経の中心思想です。仏教発祥の地インドには、仏教が生まれる以前からカースト制度が存在していました。生まれたその瞬間から自分の階級が決められていて、どんなに努力しても、その身分から一生逃れることは出来ません。これは人間にとって苦しい大前提です。世の中の決まり事を、一度リセットしたい、という気持ちは当然だったでしょう。今の日本は、当時のインドよりはよほど自由ですが、それでも、学校や会社、家族、社会、国家、資本主義など、個人を取り巻く決まりにがんじがらめになって、窮屈な気持ちになっている人は多いでしょう。なかには、逃れられず、自殺する人さえいます。心が苦しくなった時、「般若心経」の教えは、心を楽にしてくれる効果があると思います。 西洋の宗教は、科学が発達するたびに衝突を起こして来ました。科学との相性がすこぶる悪いのです。そして、一部の原理主義者の主張を除き、宗教はいつでも「科学的には」間違っていました。ところが、「般若心経」をはじめとする大乗仏教の経典は、不思議なことに最新の科学とも相性がいいのです。「物質は空である」とか「自我などない」と言った、普通に考えればびっくりするような理論が、現代の最新の量子力学や宇宙論が描き出す世界観、あるいはユング心理学が提出する集合的無意識などの一元論的考えと折り合います。これは、遥かいにしえにこの教典を書いた人々(恐らく紀元1~2世紀頃と言われていて、釈迦ではありません)が宇宙の真理に近づいていたのか、あるいは、たまたまそうなっただけなのか、私には分かりませんが、少なくとも、量子力学など全く知らなかった親鸞や空海の時代の人よりも、最新の科学について知識のある現代人の方が、大乗仏教、そして「般若心経」を別角度からも照射して思索できる、面白い時代になったのではないかと思います。これも、私がこの題材を欧米で上演したいと望む理由です。つまり、仏教の方が「今に通じる」でしょうということです。 私はこれまでに、釈迦(ブッダ)を描いた映画や舞台をいくつか観て来ましたが、共通した感想は、仏教が人々に何を教えたのかが、見終わった後に頭に残らない、ということでした。なぜだろうと考え、その理由の一端は分かったのですが、私はこのミュージカルでは、仏教と「般若心経」の教えのうち、いくつか代表的なものが、観劇されたお客様の記憶に残るような作品にしたいと願い、創作しました。日本は「仏教国」と言われながら、自らの意思で仏教を学ぼうとする人は少なく、その教えを知っている人も少ないように思われます。しかし、釈迦の時代から2,500年も伝えられ、多くの人々によって受け継がれてきた「東洋の智慧」を、ひとつの言葉でいいから持ち帰っていただきたい。この作品は、そういうミュージカルであるだけでいいと思っていました。 「お経のミュージカル」なんて、ミュージカル座は、なんて変なミュージカルを創るんだと、ミュージカル・ファンや関係者の声が聞こえてきそうです。でも、私は、日本人、アジア人なら当然の発想だと思っているのです。むしろ、今まで誰もミュージカルにしたいと思わなかったので、こんな宝石のような素敵な題材が手をつけられず残っていたことを、神様、じゃなかった、仏様に感謝したいほどです。最後に、私が「般若心経」に惹かれた理由は、ひょっとすると「舞台をやっているから」かもしれません。舞台は、瞬間に輝き、毎日変化して、消えてなくなり、後に何も残さない芸術です。そして、宇宙の本質へと繋がっています。舞台人は、「空」を理解しやすい人々ではないかと思う今日この頃です。
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〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-8-15 松本ビル
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ミュージカル「ハートスートラ」は、世界で最も有名なお経である「般若心経」を題材にしたミュージカルです。ミュージカル作家ハマナカトオルが頭に描き続けた、アジア発のミュージカルの形。日本人はもちろん、海外の人にも見せたい東洋のミュージカルの答え。これまで「ひめゆり」「何処へ行く」など数多くのミュージカルの創作を続けて来たミュージカル座代表のハマナカトオルと、ハマナカとコンビを組んで「スター誕生」「アワード」など4つのミュージカルの作曲を手がけた若き音楽家、久田菜美が創作した独創的な『まさにアジアのミュージカル!』です。2017年4月の初演から2年、新たな神秘の幕が上がります。このミュージカルは、あなたの宝石となる。どうぞご期待ください!!
「般若心経」は、1,500年の昔から、日本人に最も愛されてきたお経で、英語で「ハートスートラ Heart Sutra(心のお経=心経)」と言い、世界中で翻訳され、広く親しまれています。ジョン・レノンやスティーブ・ジョブズにも大きな影響を与えたと言われ、ジョン・レノンの世界的ヒット曲「イマジン」は、「般若心経」の「無=No」の教えが含まれていると言われています。「般若心経」の般若とは、智慧のことです。あらゆる悩みから解き放たれる仏教の心髄と言える最高の智慧が、わずか262文字の「般若心経」のなかに含まれています。西洋の人も心酔する、この奥深い東洋の智慧には、いったいどのような教えが書かれているのでしょうか。ミュージカル「ハートスートラ」は、ミュージカルという舞台芸術の魅力のすべてを使って、「般若心経」を分かりやすく紐解き、皆様に知っていただくと同時に、心と身体で感じていただく作品です。東洋的な思想・哲学・美術・音楽・舞踊の要素を詰め込んだ『アジアのミュージカル』を、どうぞお楽しみに!
1958年東京生まれ。ミュージカル作家・演出家・プロデューサー。俳優宝田明氏が主催する宝田芸術学園でミュージカルを学び、舞台俳優の活動を経て脚本・演出家として独立。数々の作品を発表した。1993年から専門学校舞台芸術学院ミュージカル部別科の主任講師として、19回の卒業公演を作・演出。多くの生徒を育てた。1995年、国産の新作ミュージカルの創造と普及を目的に「ミュージカル座」を創立。劇団代表・座付作家・演出家・プロデューサーとして、「ひめゆり」「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」「ゴースト」「ロザリー」「ルルドの奇跡」「サイト」「アインシュタイン・フォーリーズ」「センス・オブ・ワンダー」「ブロードウェイ殺人事件」「ニューヨーカーズ」「スウィングボーイズ」「舞台に立ちたい」「コンチェルト」「雪の女王」「不思議なラヴ・ストーリー」「赤ひげ」「わだつみのこえ」「何処へ行く」「マザー・テレサ 愛のうた」「チェアーズ」「スター誕生」「おでかけ姫」「月に歌えば」「ハートスートラ」「結婚行進曲」「タイムトラベラー」「二人でミュージカル」「アワード」等のオリジナル・ミュージカルや、「ママの恋人」「野の花」等のストレートプレイを発表。劇団外では、松竹「花いくさ」、黒木瞳「ママ・ラヴズ・マンボ」シリーズ、「今井清隆ファースト・コンサート」、「イル・ミュージカーレ」などを手がける。最近では、新しいミュージカル作家・作曲家・演出家のプロデュースに意欲的に取り組み、多くのオリジナル・ミュージカルを製作。日本のミュージカルの普及と発展のために力を尽くしている。公益社団法人日本演劇協会会員。
東京都出身。東京音楽大学作曲・指揮専攻(芸術音楽コース)卒業。これまでに作曲を池辺晋一郎氏に、ピアノを御邊典一氏に、ジャズピアノをリック・オヴァトン氏に師事。大学でクラシックから現代音楽までの作曲法を学び、卒業後は主にピアニストとしてクラシック、ポップス、ジャズ、合唱と幅広く活躍中。舞台においては、ミュージカル「スペリング・ビー」「モンスターズアンセム」、劇団イッツ・フォーリーズ「見上げてごらん夜の星を」にてキーボード演奏、音楽監督を担当し、その他多数のミュージカル俳優やミュージカル女優のライヴにて伴奏を行っている。ミュージカル座では、「野の花」「不思議なラヴ・ストーリー」「ママの恋人」「アイランド~かつてこの島で」「BEFORE AFTER」「スペリング・ビー」の音楽監督と演奏を担当。2015年6月、ハマナカトオルと組んだミュージカル「チェアーズ」で初めて作曲・編曲・音楽監督・演奏をつとめ、ミュージカル作曲家としてデビュー。以後「スター誕生」「ハートスートラ」「アワード」とハマナカとのコンビで4つのオリジナル・ミュージカルを作曲、高い評価を受けている。
東京都出身。6歳で子役デビュー。その後、舞台を中心にテレビやCMにも出演。主な出演舞台に、TEAM NACS『PARAMUSHIR~信じ続けた士魂の旗を掲げて』、『ピノキオ〜または白雪姫の悲劇〜』、『I LOVE A PIANO』、『手紙 2017』、『ソレイル』等。最近では歌や声の仕事にも活動の幅を広げ、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」では、日本語吹替版でラプンツェル役歌唱部分を担当。また、12月21日公開のディズニー新作映画『シュガーラッシュ:オンライン』にてリトルマーメイドのアリエル役吹替を担当。今年1月、ミュージカル座『不思議なラヴ・ストーリー』でヒロイン、アイリーン役をつとめた。ミュージカル『ハートスートラ』は、2017年の初演に続き2度目の主演となる。
山梨県出身。CMソングや戦隊シリーズ主題歌など、歌手として1万曲以上のスタジオレコーディングの経歴を持ち、俳優としてミュージカルを中心に100作品を超える舞台に出演。音楽座ミュージカル『星の王子様』(飛行士役)、ブロードウェイミュージカル’98.-99.『RENT』(コリンズ役)、’10-11.『アプローズ』(ビル役)、’13.『ペテン師と詐欺師』(ローレンス役)、『BAT BOY』では小此木まりと共演。ミュージカル座『アイランド~かつてこの島で~』、『タイム・フライズ』、T1projectミュージカル『素敵な世界』など。ディズニー映画『ジャングルブック』(キング・ルーイ役)、『塔の上のラプンツェル』(ビッグノーズ役)の吹き替えを担当するなど、多方面で活躍中。
ゆう
小此木まり舎利子
石原慎一組に出演予定の新井志啓ですが、怪我のため降板いたしました。代わりまして、組山崎朱菜が全日程出演いたします。なお、変更に伴うチケットの払い戻しはございません。何卒ご理解頂き、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
2019年05月22日(水) ~ 05月26日(日)
☞ JR品川駅から京浜急行で2駅 「新馬場」駅下車北口徒歩2分
☎ 03-3471-3200
ヒル | ヨル | |
5/22(水) | 18:30 | |
5/23(木) | 18:30 | |
5/24(金) | 13:00 | 18:30 |
5/25(土) | 13:00 | 17:30 |
5/26(日) | 12:00 | 16:00 |
開場は開演の30分前です。※本公演は組& 組の一部ダブルキャストで上演いたします。キャストの組分けを、ご確認ください。※残席ある場合は、公演開演の1時間前(5/26は両組開演の45分前)より当日券を販売いたします。ご観劇当日のご予約は承っておりません。当日券をご利用ください。※出演者並びに出演スケジュールに変更がありました場合は、何卒悪しからずご了承ください。出演者変更の場合でも、他日への変更、払い戻しはいたしかねます。※未就学児童のご入場はできません。※車椅子でご来場頂く場合は、ミュージカル座へご連絡をお願いいたします。
〠 330-0061
埼玉県さいたま市浦和区常盤9-8-15 松本ビル
【東京営業所】
〠170-0013
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TEL:048-825-7460
FAX:048-825-7461
E-mail:m-za.info@musical-za.co.jp
ニューヨーク、ブロードウェイの街角にたたずみ、多くのミュージカルの看板を見上げながら考えることは、この街で日本人が創作した「アジアのミュージカル」が成功するとしたら、どんな作品だろう、ということです。約20年間、私の頭の中には、ひとつの題材があり、それを越える題材は浮かびませんでした。それが、日本で世界で最も愛されているお経「般若心経」でした。「えっ!? お経をミュージカルに!?」と、意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長年ミュージカルに携わっている私からしてみると、決して意外ではないのです。たとえば、ミュージカル「キャッツ」は、T・S・エリオットの詩が原作です。色々な猫の思想や哲学が散りばめられた詩の束が、ミュージカルになりました。「お経」も、色々な仏教の思想や哲学が散りばめられた、詩によく似たものだと、私には思えます。しかもお経は、リズムに合わせて声に出して読誦するものですから、歌とも、とても近いものと感じていました。でも、その内容に関しては、私たちアジア人でも、よく知らない人が多いと思います。お経なんて法事で聞くくらいですから、どうしてもお葬式のイメージと一緒になってしまいます。ミュージカル座の劇団員に「お経をミュージカルにしようと思うんだ」と話すと、「えっ!こわーい!」と言われたことがあります。でも、内容をよく知ると、お葬式とは関係ないもので、むしろ生きるために必要な、知っておいた方がいい智慧が書かれているのです。
「般若心経」が言っていることの中心は、なんと言っても「空」と「無」のオン・パレードでしょう。この世の中のすべて、そして自分さえも、空である、無であると繰り返し言っています。「自分という存在は、五蘊という五つの要素の集まりであって、自分という確固たる存在はない」と言うのは釈迦の教えですが、大乗仏教の経典である「般若心経」では、その五蘊さえも「空」であると説きます。この世の中にある決まり事や大前提を、すべて「ない」とリセットすること、今の言葉で言うと「初期化」することが、「般若心経」というお経の中心思想です。仏教発祥の地インドには、仏教が生まれる以前からカースト制度が存在していました。生まれたその瞬間から自分の階級が決められていて、どんなに努力しても、その身分から一生逃れることは出来ません。これは人間にとって苦しい大前提です。世の中の決まり事を、一度リセットしたい、という気持ちは当然だったでしょう。今の日本は、当時のインドよりはよほど自由ですが、それでも、学校や会社、家族、社会、国家、資本主義など、個人を取り巻く決まりにがんじがらめになって、窮屈な気持ちになっている人は多いでしょう。なかには、逃れられず、自殺する人さえいます。心が苦しくなった時、「般若心経」の教えは、心を楽にしてくれる効果があると思います。
西洋の宗教は、科学が発達するたびに衝突を起こして来ました。科学との相性がすこぶる悪いのです。そして、一部の原理主義者の主張を除き、宗教はいつでも「科学的には」間違っていました。ところが、「般若心経」をはじめとする大乗仏教の経典は、不思議なことに最新の科学とも相性がいいのです。「物質は空である」とか「自我などない」と言った、普通に考えればびっくりするような理論が、現代の最新の量子力学や宇宙論が描き出す世界観、あるいはユング心理学が提出する集合的無意識などの一元論的考えと折り合います。これは、遥かいにしえにこの教典を書いた人々(恐らく紀元1~2世紀頃と言われていて、釈迦ではありません)が宇宙の真理に近づいていたのか、あるいは、たまたまそうなっただけなのか、私には分かりませんが、少なくとも、量子力学など全く知らなかった親鸞や空海の時代の人よりも、最新の科学について知識のある現代人の方が、大乗仏教、そして「般若心経」を別角度からも照射して思索できる、面白い時代になったのではないかと思います。これも、私がこの題材を欧米で上演したいと望む理由です。つまり、仏教の方が「今に通じる」でしょうということです。
私はこれまでに、釈迦(ブッダ)を描いた映画や舞台をいくつか観て来ましたが、共通した感想は、仏教が人々に何を教えたのかが、見終わった後に頭に残らない、ということでした。なぜだろうと考え、その理由の一端は分かったのですが、私はこのミュージカルでは、仏教と「般若心経」の教えのうち、いくつか代表的なものが、観劇されたお客様の記憶に残るような作品にしたいと願い、創作しました。日本は「仏教国」と言われながら、自らの意思で仏教を学ぼうとする人は少なく、その教えを知っている人も少ないように思われます。しかし、釈迦の時代から2,500年も伝えられ、多くの人々によって受け継がれてきた「東洋の智慧」を、ひとつの言葉でいいから持ち帰っていただきたい。この作品は、そういうミュージカルであるだけでいいと思っていました。
「お経のミュージカル」なんて、ミュージカル座は、なんて変なミュージカルを創るんだと、ミュージカル・ファンや関係者の声が聞こえてきそうです。でも、私は、日本人、アジア人なら当然の発想だと思っているのです。むしろ、今まで誰もミュージカルにしたいと思わなかったので、こんな宝石のような素敵な題材が手をつけられず残っていたことを、神様、じゃなかった、仏様に感謝したいほどです。最後に、私が「般若心経」に惹かれた理由は、ひょっとすると「舞台をやっているから」かもしれません。舞台は、瞬間に輝き、毎日変化して、消えてなくなり、後に何も残さない芸術です。そして、宇宙の本質へと繋がっています。舞台人は、「空」を理解しやすい人々ではないかと思う今日この頃です。