20世紀最大の科学者であるアルバート・アインシュタインの世界を描いたミュージカル。相対性理論によって私たちの世界観を一変させ、原爆を生み出す方程式を発見して、人類を新たな時代へと導いたアインシュタインの人生を描くことで、科学の時代と言われた激動の20世紀を振り返る。
ドイツに生まれたユダヤ人であったアルバートは、やがてナチスの台頭で祖国を追われ、アメリカに亡命してナチスに対抗するために原爆の開発を推進する手紙に署名する。完成した原爆は日本に落とされ、最悪の悲劇が起こり、アルバートははげしく苦悩する。
科学の発達が人類にもたらした光の面と闇の面を同時に体験した彼の人生は、まさに20世紀の歴史そのものであった。
日本人のミュージカル作家として書かなければならない題材をさがしていた山口&ハマナカのコンビが「ひめゆり」とはまったく違うアプローチで原爆の問題を描き出した異色の作品。全編を歌で綴る得意の形式だが、 アインシュタイン役を彼のワンマン・ショーのように舞台中央に置き、彼が生涯追い求めた「光」をMC役にして、歌と踊りのみのコンサートのようなスタイルで展開する実験的な野心にあふれた作品である。
全36曲中、30曲を歌ったアインシュタイン役の林アキラの歌が圧倒的。光役の伊東恵里は奔放に歌い踊って、従来の役とは違った明るい面を見せた。